グスタフ・マーラー編



グスタフ・マーラーの家編

南オーストリアのヴェルター湖畔マイアーニヒにマーラーは、1899年39歳のときに山荘を建てました。その裏に森があって、そこに小さな作曲小屋を造り、夏に一人こもって曲作りをしたそうです。この山荘と作曲小屋を撮りに行ったのです。途中、山を越えるとき吹雪に遭い、現地のコーディネーターが向こうでこの天気だったらモデルの衣装がないし、撮影できるかどうかわからない。どうしますか?と聞いてくるんです。どうしたらいいかぼくもわからないから、向こうに着いてから考えましょうと答えると、気楽ですねと言われました。が、外は吹雪いているし、考えても仕方がないんです、本当に。そうして山を越えて山荘に着いたら先ほどの吹雪が嘘のように,何も降っていない。少し曇っていましたが、湖の側から山荘を狙い、森の作曲小屋を撮りました。マーラーはこの小屋で1899年、交響曲4番ト長調に着手。翌年に完成。1902年42歳のとき交響曲5番嬰ハ短調、1904年交響曲6番イ短調、1905年交響曲7番ホ短調を書き上げ、実に多くの作品を生んだ小屋なんですね。CMに使った曲は交響曲1番『巨人』からたった30秒を盗りました。同じ曲の同じ部分をいろいろな指揮者で、いろいろなオーケストラで聴き比べをして、シカゴ交響楽団のものを使いました。



後日談として。
モーツアルト、ベートーヴェン、マーラー、この3本のテレビCMが流れ、お気に召してくれた視聴者の方たちが、この撮影場所に自分たちでツアーを組んで旅行したという話をクライアントから聞きました。うれしい限りです。旅行会社のパックツアーではありえないコースを辿る独自の旅は、さぞ楽しかったことでしょうね。